CBGはCBDやTHCと比べてあまり知られていない成分ですが、実はCBDやTHCの元となるカンナビノイドであり、カンナビノイドの母と呼ばれ、様々な効果が期待されています。CBGとCBDの違いや、CBGに関する最新の研究についても紹介します。
CBGとは?
CBGとは、「カンナビゲロール(Cannabigerol)」の略であり、CBDやTHCなどと同じように、大麻に含まれるカンナビノイドの一種です。大麻に含まれるCBGの割合は、通常約1%と少なく、CBDやTHCと比べて希少性の高い成分とされています。
大麻草が成長し始めると、CBG の酸性形態である CBGA は、植物酵素によって 3 つのカンナビノイド前駆体、THCA、CBDA、および CBCA に変換されます。これらの前駆体は熱や光によって脱炭酸されると、それぞれTHC、CBD、CBCに変化します。つまり、CBGはすべてのカンナビノイドの原点となるカンナビノイドです。
CBGとCBDの違い
CBGとCBDは共通点も多くありますが、いくつかの違いもあります。
含有量
大麻草に含まれるCBGは約1%以下ですが、CBDは約10~20%程度含まれます。そのため、CBGを抽出するにはより多くの原料が必要であり、コストも高くなります。
向精神作用
CBGもCBDも向精神作用を持たないカンナビノイドです。つまり、ハイになったりすることはありません。
受容体への結合力
CBGもCBDもエンドカンナビノイドシステム(ECS)に影響を与えますが、その結合力に違いがあります。CBGはECSの主要な受容体であるCB1受容体とCB2受容体に弱く結合しますが、CBDはこれらの受容体に結合しないか非常に弱く結合するだけです。その代わり、CBDは他の受容体やチャネルに作用します。
効果
CBGもCBDも抗炎症作用や抗酸化作用などの共通の効果を持ちますが、CBGはCBDにはない独自の効果も持っています。例えば、CBGは眼圧を下げることができるため、緑内障の治療に有効である可能性があります。また、CBGは抗菌作用や抗真菌作用を持ち、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などの耐性菌に対しても効果を示すことが報告されています。
CBGに関する最新の研究
CBGはまだまだ研究が進んでいないカンナビノイドですが、近年、その医療的な可能性について注目されています。
神経保護作用
CBGは神経細胞を保護する作用があることが動物実験で示されています。特に、ハンチントン病のマウスでは、CBGは神経変性を防ぎ、運動能力や認知機能を改善することが見られました。また、パーキンソン病のマウスでは、CBGはドーパミン神経細胞の死亡を抑制し、運動障害を軽減することが報告されています。
消化器系への作用
CBGは消化器系にも良い影響を与えるとされています。例えば、炎症性腸疾患(IBD)のマウスモデルでは、CBGは腸の炎症や損傷を減少させることが見られました。また、大腸癌の細胞株では、CBGは細胞増殖や転移を抑制し、アポトーシス(細胞死)を誘導することが報告されています。
皮膚への作用
CBGは皮膚にも有益な作用を持つことが分かっています。。例えば、乾癬のマウスでは、CBGは皮膚の炎症や角化異常を改善することが見られました。また、皮膚癌の細胞株では、CBGは細胞増殖やアポトーシスに影響を与えることが報告されています。
まとめ
今回は、カンナビノイドの母ともいわれるCBGについて解説しました。CBGはCBDやTHCの元となるカンナビノイドであり、向精神作用を持たずに様々な効果が期待されています。CBDと併用することで相乗効果も得られる可能性があります。CBGに関する研究はまだ始まったばかりですが、今後さらにその医療的な可能性が明らかになっていくでしょう。
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