大麻にはTHC以外にも多くのカンナビノイドと呼ばれる成分があります。その中の一つがTHCV(テトラヒドロカンナビバリン)です。THCVは、日本では合法で、さまざまな効果が期待されているカンナビノイドです。
THCVは2023年9月10日より日本で規制物質となりました。
では、THCVとはどのような成分なのでしょうか?また、THCとはどのように違うのでしょうか?この記事では、THCVについて詳しく解説していきます。
THCVとは?
THCVは、大麻に含まれる植物性カンナビノイドの一種で、THCのようにΔ8 THCVとΔ9 THCVが存在します。
THCVは、大麻に含まれる割合が低く、一株から1%も取れないほど希少性の高いカンナビノイドです。特に、アフリカ原産の大麻に多く含まれていると言われています。
THCVとTHCの違い
THCVとTHCは、名前が似ていることから、「似たような成分なの?」と考えている方もいるかもしれません。
THCがいわゆる「ハイ」になる成分だということは、かなりの人が知っていますが、この2つは全く違う作用をしています。
例えば、THCは食欲を増進させる効果がありますが、THCVは食欲を抑える効果があります。また、THCは鎮静作用や多幸感をもたらしますが、THCVは頭が冴えるような効果をもたらします。
カンナビノイドの種類としては、どちらかというとCBD側に近い感じがします。
摂取量で変わるTHCVの効果
THCVの摂取量によって、効果が変わるという話があります。これは、THCVがカンナビノイド受容体に対して、用量依存的に異なる作用を示すからです。
カンナビノイド受容体には、主にCB1とCB2の2種類があります。CB1は主に中枢神経系や消化器系に分布し、CB2は主に免疫系や末梢神経系に分布しています。
一般的に、カンナビノイドはカンナビノイド受容体と結合することで、その受容体の活性化や阻害を引き起こします。これをアゴニストやアンタゴニストと呼びます。
しかし、THCVはカンナビノイド受容体と結合する際に、その受容体の活性化や阻害を引き起こすだけでなく、他のカンナビノイドが結合するのを妨げたり、逆に促進したりすることもあります。これをアロステリック調節と呼びます。
つまり、THCVはカンナビノイド受容体に対して、アゴニストやアンタゴニストだけでなく、アロステリック調節も行うことができるのです。
このような複雑な作用機序のため、THCVは摂取量によって効果が変わります。例えば、
- 低用量では、THCVはCB1受容体を不活性化させることで食欲抑制効果をもたらします。これは、THC(テトラヒドロカンナビノール)の食欲増進作用とは逆の効果です。
- 高用量では、THCVはCB1受容体を活性化させることで「ハイ」になる作用をもたらします。これは、THCの酩酊作用と同じ効果です。また、食欲抑制効果も減少する可能性があります。
THCVに期待される効果
THCVに関する研究はまだ始まったばかりですが、動物やヒトを対象とした研究では、以下のような効果が期待されています。
抗けいれん薬
2015年に「Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics」誌に掲載されたレビューでは、THCVがてんかん患者の発作を抑制する見込みがあると結論づけられています。
抗炎症作用
「British Journal of Pharmacology」誌に掲載された2010年の研究では、THCVがマウスの炎症と関連する痛みを軽減することが分かりました。
食欲抑制および血糖値調整作用
2020年に「Journal of Cannabis Research」誌に掲載された既存研究のレビューによると、THCVは食欲抑制と血糖値のコントロールをもたらすといいます。この研究は、肥満と糖尿病の人とマウスが対象でした。
骨の成長促進
「Calcified Tissue International」誌で2007年に発表された、組織サンプルを用いた研究によると、THCVは骨の健康と治癒を促す可能性があることが分かりました。
神経保護作用
「Neurobiology of Disease」誌に掲載されたマウスを対象とした2020年の研究では、THCVには神経保護作用があり、パーキンソン病の治療に役立つ可能性があると結論づけています。また、「British Journal of Pharmacology」誌に掲載された別の研究では、THCVが神経炎症やハンチントン病の治療の見込みがあると述べています。
まとめ
この記事では、THCVについて詳しく解説しました。THCVは、大麻に含まれるカンナビノイドの一種で様々な医療的効果が期待されていましたが、日本では合法な成分ですTHCVは2023年9月10日より日本で規制物質となりました。摂取量によって効果が変わってくる、とても興味深いカンナビノイドです。今後の研究調査に期待です。