睡眠は私たちの健康や幸福にとって非常に重要な要素ですが、現代社会では多くの人が不眠症や睡眠障害に悩まされています。
そんな睡眠の悩みを解決するために、近年注目されているのがCBD(カンナビジオール)という成分です。CBDは大麻(ヘンプ)の種子や茎から抽出される天然由来の物質で、不安や痛み、ストレスなどを緩和する効果が期待できると言われています。また、THCが入っていない製品であれば、日本でも問題なく使用できます。
CBDが睡眠を改善するメカニズム
CBDが睡眠を改善するメカニズムは、主に以下の2つの点に関係しています。
CBDがエンド・カンナビノイド・システム(ECS)に作用してアナンダミドという「幸福の分子」を増加させる
ECSとは、人間の体内に存在するシステムで、カンナビノイド受容体という受容体と内因性カンナビノイドという物質が結合することで様々な生理機能を調節しています。ECSは神経系や免疫系などに広く関与し、気分や記憶、食欲、痛み感覚、ストレス反応などに影響を与えます。
CBDはECSに作用し、内因性カンナビノイドの一種であるアナンダミドの分解を抑制し、またアナンダミドのシグナル伝達効果を促進することが研究で明らかになっています。アナンダミドは「幸福の分子」と呼ばれる物質で、気分の向上やリラックス効果をもたらします。つまり、CBDはアナンダミドを増やすことで、精神的なストレスや不安を軽減し、睡眠に入りやすい状態を作ると考えられます。
CBDがセロトニンを神経伝達物質と結合して気分や不安を安定させる
CBDはセロトニンという神経伝達物質と結合する、5-HT1A神経受容体を活性化することが研究で明らかになっています。セロトニンは、不安の抑制や気分の安定をもたらすとされ、セロトニンの効果を高めることが不安障害やうつ病の改善にもつながります。CBDはセロトニンの働きを促進することで、心理的な不安や抑うつを和らげ、睡眠の質を高める可能性があります。
CBDの効果的な使い方
CBDはさまざまな形態で提供されていますが、睡眠に関してはオイルやカプセルなどの経口摂取がおすすめです。オイルは舌下に数滴垂らして吸収させる方法が一般的ですが、カプセルは飲み込むだけで簡単です。どちらも消化器官から吸収されるため、即効性はありませんが、持続性は高いです。
CBDの摂取量は個人差がありますが、一般的には10~20mg程度の少量から始めてください。効果が感じられない場合は徐々に増やしていくことができますが、一度に大量に摂取しても効果が増えるわけではありません。また、睡眠前に摂取する場合は30分~1時間前くらいが目安です。
CBDの効果についての科学的な根拠
CBDが睡眠に効果があるという主張は、科学的な根拠に基づいているのでしょうか?実は、CBDに関する研究はまだ十分ではなく、睡眠に関する研究も限られています。しかし、いくつかの臨床試験や観察研究では、CBDが睡眠の質や量を改善する可能性が示されています。
例えば、2019年に行われた一つの研究では、不安や不眠の症状を訴える72人の成人に対してCBDを処方する臨床実験を行いました。結果は、たった1ヶ月後の短い期間の間でも、不安症状は79%の人が、不眠症状は67%の人が改善したということです。また、CBDの耐性や依存性も問題なかったと報告されています。
別の研究では、パーキンソン病患者にCBDを投与することで、レム睡眠行動障害(睡眠中に暴れたり叫んだりする障害)が減少したことが観察されました。また、CBDは睡眠障害以外にもパーキンソン病患者の精神的な幸福感や生活を向上させる効果もあることが示されました。
さらに、2020年に発表されたメタ分析では、CBDが不安やストレスによる睡眠障害を改善することが統計的に有意であることが確認されました。このメタ分析では、CBDを使用した場合とプラセボを使用した場合とで睡眠の質や量を比較した11件のランダム化比較試験(RCT)を分析しました。その結果、CBD群ではプラセボ群よりも睡眠時間が長くなり、入眠までの時間が短くなり、目覚める回数が少なくなりました。
これらの研究からわかることは、CBDは不安やストレスなどの心理的な要因によって引き起こされる睡眠障害に対して有効である可能性が高いということです。しかし、CBDが睡眠そのものに直接作用するかどうかはまだ明らかではありません。また、CBDの最適な摂取量や摂取方法、摂取タイミングなども個人差があるため、一概に言えません。さらなる研究が必要です。
まとめ
CBDは大麻(ヘンプ)から抽出される天然由来の物質で、日本でも問題なく使用できます。CBDは気分や不安を安定させる効果が期待できるため、不安やストレスによって引き起こされる睡眠障害に対して有効である可能性があります。しかし、CBDが睡眠そのものに直接作用するかどうかはまだ不明ですし、個人差や摂取量や摂取方法なども影響します。CBDを睡眠に使用する場合は、オイルやカプセルなどの経口摂取がおすすめですが、他の薬剤と相互作用する可能性もありますので、必ず医師に相談してください。